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チェックなんて大嫌いだ!



私は他人の訳文のチェックは嫌いだ。他人の仕事ぶりを意識しなければならない今回のような仕事も嫌いだ。

現在のところ、以前から継続して受注している日中訳のチェックのみ請けている。それ以外は原則的にいろいろ理由を付けて断ってしまう。

翻訳は一人でやっている分には、心静かな職人仕事である。
前回よりも今回、今回よりも次回と、毎回の経験を蓄積させて少しずつ少しずつ完成度の高い訳文を作れる翻訳者に成長していく喜び。
感情の波を鎮め、じっと耳をすませてやっと感じ取れるようなそんな喜びを支えにこの仕事を続けてきた。

でも、チェックは違う。
心の平安が乱される実に嫌な仕事なのだ。
料金が安いのに、初稿の出来が悪ければ、訳文を作成する以上の労力が求められる。
でも、嫌なのはそれだけではない。
なぜか完成度の高い仕事をしようと思えば思うほど、どす黒い感情が掻き立てられていく。
それは妙な対抗心だ。
優越感を感じるだけでは気が済まず、相手を心の中でこれでもか、これでもかと罵倒する。
「私はいつもあんなに苦労しているのに、あんたはどうしてちゃんとやらないんだよ。仕事をする気あんのかい!」

この世界には、いろいろな実力の翻訳者がいて、すべての訳文が極上である必要はない。
翻訳会社からすれば、クライアントが納得しさえすれば(文句を言わなければ)それでよいのだろう。
そうだとすれば、翻訳者が必要以上に張り合ったり、こだわりを振りかざしたりする姿なんて、コーディネーターにとって単にわずらわしいだけのものなのかもしれない。
だから、そこはできるだけスマートに行きたいのだが、やっぱり「小人」の私はギラギラした対抗心を隠しきれていないのかもしれないとも思う。

(ああ、こんなことを書いているうちに、自分が自分の力を見せ付けようとして翻訳会社に対してしてきたいろいろな言動を思い出してしまった。こっぱずかしい。)

下手や手抜きがたくさんいるおかげで、私ごときが翻訳会社に重宝されているのだ。
それに、自分よりも腕の立つ翻訳者ばかりだったら、そっちのほうが何倍もつらいではないか。
そう思うことにする。
by ymznjp | 2007-03-24 23:42