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尋ねたいけど、尋ねない

最近、ある会社から頻繁に翻訳チェックの打診がある。
この会社に登録したのは、もう10年くらい前かもしれない。
登録時に合意の上でレートを決めたのだが、あるとき、「当社では翻訳レートは一律○○円にしました」と言うことで一方的にレートを下げてきた。
その後、他社からの受注が安定してあったので、この会社の翻訳の打診は基本的に断っていたが、
何となくうっかりして受注してしまったことがあったから(翻訳会社の名前は似たようなものが多いので一方的にレートを下げたその会社だということを受注時に気づかなかった)、こちらも「レートの引き下げに同意した」ことになってしまったのかもしれない。

そういうことがあって、何となく不信感を持っていたのだが、
数ヶ月前に短い仕事だったので、1件打診を受けてしまった。
それ以来、翻訳ではなく、チェックの打診を頻繁にだしてくるようになった。

「この案件はどうしても品質のよいものとしたいので、社内で検討した結果、ぜひあなたに」のようなことが毎回書いてあるのだが、レートについては触れていない。
たぶん、よくて翻訳料の3分の1とかその程度だろう。
日中訳のチェックはこれまでにも断り切れずに受けたことがあるが、技術関係を除き、十中八九、文章を書き慣れない人が苦し紛れにでっちあげたような微妙な日本語原文に、正誤の判断が難しいさらに微妙な中国語訳がついているという代物が多く、自分で翻訳をするのよりも、ずっと手間暇がかかり、かつ、すっきりとしない気分になる仕事なのである。
それを、もし400字数百円で受けたら、頭が割れるほど考え抜いて、時給数百円ということになるだろう。

それを受けるくらいなら、貴重な時間を自分の楽しみや家族のために使ったほうがマシである。

翻訳会社も厳しい現実に直面し、品質管理の方法に苦慮しているのだろう。だが、チェックのレートを実情に合わない低い金額に据え置いたままで、品質の向上が見込めると本当に思っているのだろうか。

よく翻訳会社のHPを見ると、「チェック体制が整っているので、高品質の成果物を提供できる」と書いてあるが、成果物の質はチェック体制によって保たれるわけではなくて、一次訳を作成する翻訳者の技量に依存している。いいかげんな訳に時給200円だの300円だののチェックをいくら付けたとしても質が保たれるわけがない。


ところで、この会社のチェックのレートはいったいいくらなのだろう。
時給にして数百円で、「品質重視の案件なのでぜひあなたに」と言われても荷が重すぎる。
「翻訳者のネガティブスタンスを変えるためのリップサービス」なのかもしれないけれど、かえって気が重くなって、受注する気がしなくなる。

「品質を重視している」案件のチェックのレートがいったいいくらなのか聞いてみたいけれど、
それを聞いてから断ったら、どちらもいやな気分を引きずるだけだ。楽な仕事ではないことも分かっているし、かつ、レートも低い可能性が高いのだから、最初から聞かないで断るのが双方のためだろう。
by ymznjp | 2010-06-29 08:45