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目覚めた時に

早朝、夢の中で、何かうろ覚えの歌をつぶやいていた時に、
アラームの音で無理やり現実の世界に引き戻された。

「昨日またかくてありけり
今日もまたかくてありなむ
この命なにを齷齪(あくせく)
明日をのみ思ひわづらふ」

これは何の歌だっけ。
そう思いながら、そのまま忙しい朝の日課が始まってしまい、
数時間が過ぎてから、検索してみた。

そうだ。これは「千曲川旅情の歌」だった。

このあとは
「いくたびか榮枯の夢の

消え殘る谷に下(くだ)りて

河波のいざよふ見れば

砂まじり水巻き歸る

 

嗚呼(あゝ)古城なにをか語り

岸の波なにをか答ふ

過(いに)し世を静かに思へ

百年(もゝとせ)もきのふのごとし」と続いていくようだ。

まあ、そういうはるかな時の流れの中で、
あくせくしてもしかたがないということなのだろうけれど、
そうは言っても、私のようなものにとって、あくせくして過ごすのは、かえって楽なことなのだ。

あくせくと何年間もすごしてきて、今、思いがけなく、ほっとできる時間もできたけれど、
その急にゆるやかになった時間の流れをどうやり過ごせばよいのか分からないでいる。

どうやったら、「過し世を静かに思ふ」ことができるのだろう。
そういうことをずっとしたことがないのに。

人生の時間は限りある貴重なものだとは言え、ただただあくせくして物も思わずそれをやり過ごしてしまう、そういう気安さに、
早くまた戻りたいものだ。
そう思ってしまう私というのもまったく無粋で因果な性格である。
by ymznjp | 2009-07-09 23:04