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どうしたらいいか、私にも分からない

なぜか分からないけれど、この1週間で、「中国語翻訳者になりたい」というメールが4通も来た。
翻訳業界は、タクシー業界と同じで、不況になると仕事が少なくなるのに、参入希望者が多くなるようだ。

4通とも、「おすすめしません」と書いて返したが、たぶん、それが意に沿わなかったのだろう。
1通しか「ありがとう」の返事がなかった。

どの人も私のブログを見て連絡してきたらしいが、このブログを見れば、私が「おすすめしない」と言うのはわかりきったことだろう。

はっきり言って、これから参入する人は、翻訳で生活をなりたたせることはできないだろう。
翻訳会社は初心者には最低レートを提示するはずだ。それが最近では、できあがり800円/400字くらいまで下がっているようだ。

私が初心者だった10数年前の半分以下のレートである。
これでは、一日20枚、月20日稼働するとしても、

20枚×800円×20日×12ヶ月 

年収384万円にしかならない。病気の時などの保証もない。
だけれど、実際には、技術文書や金融などの専門性の高い文書を、分野を選ばず、かつ、品質を落とさずにコンスタントに1日に20枚もこなすことはできないだろう。
英語のように一つの分野に特化して効率化することもできないし、取れる仕事を何でも取って、クレームがでない程度に品質を維持しようとするなら、この半分強くらいかもしれない。


また、今回のような反日暴動だとか、震災だとかで、産業界の取引が減るようなことがあると一気に受注量が減ることもある。低料金で、不安定な仕事を、孤独な環境で続ける。考えただけでも精神を病みそうである。



十数年の翻訳歴がある私にだって、新規の会社は、平然と1000円を提示してくる。それで「ぜひあなたに」と言うのである。もちろん、お断りしたけれど。

だから、今、初心者で800円を提示される人は、スキルの向上による将来のレートの引き上げなどは期待しないほうがよい。

千恵さんのコメントにあるような「家にいてできるから安くてもやりたい」という人以外は、手出しをしないほうがよいのではないだろうか。

翻訳会社はともすると「デフレですし、他の方にもレートを下げていただいています」というが、
物価は翻訳レートのように10年前の半額までは下がっていない。
この十年間で、交通費、子どもの教育費、公共料金などの固定費は、ほとんど下がっていないし、国民年金や健康保険料は上がってさえいる。
そう考えると、10年くらい前には翻訳で生活を何とか成り立たせていた人たちのうちの多くが、かなり生活水準を下げざるを得ない状況に追い込まれていることになる。

他のマシな選択肢がある人は、ぜひそちらほうを選んでください。
翻訳業が、何か知的な仕事のように思ってあこがれているのなら、そんな夢から目を覚ましてください。

資産で食べていける人、安定した収入のある配偶者を持つ人以外はおやめになったほうがよいと思います。

それに、どうやったら、食べていけるかなんて、私に聞かないでください。
私自身、分からないのですから。
それよりも、できあがり400字で、800円とか、1000円とかのレートを翻訳会社が提示してきたら、
「これでどうやって食べていけるのですか」とそちらに聞いてください。
ただし、英語の場合は、専門分野の仕事のみを取ることもできるし、データ化された資料も多く、中国語よりも有利なので、あくまでも、「中国語の場合、どうやって食べていけるのか」と聞いてください。

もし、それで翻訳会社からの回答があったら、私にもぜひ教えてくださいね。
by ymznjp | 2012-09-23 21:47